遺産の使い込みでお困りの方へ

「他の相続人が、親の遺産を使い込んだ可能性があるのだが、どうすれば良いのか?」

「もっとあるはずなのに、なぜか遺産が少なかった・・・」

そのようなお悩みを抱えていらっしゃる方は、少なくありません。

遺産とは本来、法定相続人がそれぞれ定められた割合分を受け取ることが出来る財産であるのに、そのルールを無視して、特定の人物が使い込んでいることが発覚したとしたら、残された相続人が強い憤りを感じてしまうのは当然です。

ここでは、遺産の使い込みとはなにか、また、使い込みが疑わしき場合、どのように対処したら良いのかをご説明していきます。

1 遺産の使い込みとは?

一言で遺産の使い込みと言っても、そのケースは様々です。

一般的に多い事例としては、預貯金の引き出し、生命保険の解約返戻金の着服、不動産賃料の着服、不動産の売却金の着服、などのケースが挙げられます。

被相続人の生活費や医療費として使用した場合は「使い込み」とはなりませんが、引き出した者が、被相続人のためではなく私的に使った事実が判明した場合は、「使い込みをした」ということになります。

2 使い込みを立証することは難しい

遺産の使い込みの定義については前項で記載したとおりですが、実際には、「使い込みをした」という事実を自力で立証することは、難しいと言わざるを得ないのが現状です。

「立証は難しいと言われても、悪いことをしたのは使い込んだ相手なのにどうして?」と感じてしまうかもしれません。

その大きな理由としては、相手がすんなりと「自分のために使った」と認めてくれることがほぼないからです。

使い込みの立証には、「特定の人物が、被相続人の遺産を私的に利用した」という確たる証拠が必要となります。その証拠となるものを相手がすぐに出してくれれば良いのですが、現実は非協力的なことが多いでしょう。その場合、自力で調査をして、証拠を一つ一つ集めなければいけませんが、これが非常に大変な作業であるため、諦めて泣き寝入りしてしまう方も少なくありません。

ただでさえ、被相続人が亡くなった後というのは精神的にも落ち込み、また様々な手続きも抱えた状態です。そこから、使い込みの事実を確認する作業をするということが、いかに大変であるかは言うまでもありません。

しかし、本来自身が貰うべき遺産が不当に減ってしまうのですから、「泣き寝入りなんて絶対にしたくない」とお考えの方は多くいらっしゃると思います。

そこで次項では、実際に使い込みの調査をする場合において、どのように進めていけばよいのかを解説していきます。

3 使い込みの証拠となるもの

使途不明金の証拠を集める理由として、「特定の人物が、被相続人の遺産を私的に使用していなかったかどうか」という疑いを明確にする、ということはもちろんですが、その使途不明金が「本当に被相続人の生活のために使用していた」という可能性もあるということを、忘れてはいけません。そのためには、引き出されたお金がどこへいったのか、その行先を特定することが大切です。

そこで、使い込みで特に多いケースである、「被相続人が認知症であった場合」を例にご説明します。

事例

調査にあたって、まずは、本人に判断能力があったのか、また、本人が自力で預貯金を引き出せる状態であったのか(身体的不自由はなかったのか)を確認する必要があります。

それを証明する資料となるのが、病院で保管されている医療記録と、介護事業所で保管されている要介護認定記録です。

これらの記録には、本人の心身の状態や判断能力の有無等を確認できる情報が記載されていますので、被相続人自らが預金を引き出すことが出来る状態であったのかを、そこから推察することが出来ます。

例えば、使い込みをしたと疑われる人物が、「●年●月頃に、被相続人自らが銀行で引き出して、被相続人が使用した」と回答した場合、記録に記載されている被相続人の健康状況と、預貯金の引き出しがあった時期とを照らし合わせてみると、それが実際に可能な状態であったのかどうかを分析することが出来るのです。

また、上記の記録の他にも、相続人の立場からでも取得可能な資料がありますので、まずは各機関に対して、以下の資料を請求すると良いでしょう。ただし、資料のなかには保管記録が定められており、期間経過後は破棄されてしまうものもありますので、注意が必要です。

  1. 被相続人の預貯金の通帳、取引履歴(多くの金融機関で10年間の保存期間)
  2. 不動産全部事項証明書、売買契約書
  3. 被相続人の証券口座の取引履歴(5~10年の保存期間)
  4. 被相続人の介護記録(2~5年の保存期間)
  5. 被相続人の医療記録(3~5年の保存期間)
  6. 被相続人の要介護認定記録(3~5年の保存期間)

しかし、上記のような証拠資料を揃えると言っても、まずは相続人を特定するための資料から揃えなければいけません。

被相続人の出生から死亡までの戸籍を取得し、そこからすべての相続人を特定する作業は、戸籍の読み方に慣れていない方ですと、かなりの時間がかかってしまうことがあります。

弁護士にご依頼いただくと、戸籍の収集から資料の取得までをすべて代理で行いますので、「これ以上自分で調査するのは難しいかもしれない」とお悩みの場合は、一度弁護士へご相談されることをおすすめいたします。

4 そのほかの証拠

使い込みをしたと疑われる特定の人の言い分と矛盾するSNSやメール、LINEトークなどがある場合、裁判などで有利になる可能性もあります。

例えば、使い込みをした人が高級車を購入した時期と被相続人の口座から多額のお金が引き出された時期が近い場合、特定の人が使い込みをしたという疑いが強くなります。SNS等から特定の人が高級車を購入したなどがわかる場合もあり、有効な証拠としてSNS等が使われることも少なくありません。

どのような証拠が有利になるのかについては、裁判を見通したうえで考える必要があります。一度弁護士にご相談いただき、どのような証拠を集めるのがいいのかを知ってから、証拠集めをされることをおすすめいたします。

5 資料が揃ったら

証拠となる資料が揃ったら、いよいよ請求の準備にかかります。

使い込みが疑われる人物と話し合いを行います。その際、準備した証拠を提示し、実際に使い込んだとされる金額が双方で明確にわかるようにしておくことが大切です。

もっとも、いくら証拠を提示したからと言って、相手がすんなりと認めてくれることは少ないのが現状です。話し合いで円満に解決が出来なかった場合は、調停または訴訟へ移行することとなります。

相手が話し合いでの交渉に応じなかった場合、「不当利得返還請求」という訴訟を起こす方法があります。

これは、民法第703条において、「本来利益を得るはずの人が損失を被る形で別の人が利益を得る場合に、損失を被った人が本来得るはずだった利益を請求することと明記されているように、裁判所において使い込みの事実を明確にすることが出来るという手続きです。

ただし、不当利得返還請求には以下のような「時効」存在しているため、くれぐれもご注意ください。

不当利得返還請求の時効

  • 遺産の使い込みを知ったときから5年
  • 遺産が使い込まれてから10年

なお、不当利得返還請求訴訟以外にも、損害賠償請求訴訟や、遺産分割調停などの方法もあります。

しかし損害賠償請求においては、不当利得返還請求より短い時効が定められているため、事案にもよりますが、不当利得返還請求が一般的です。

また遺産分割調停においても、通常、遺産の内容を各相続人が把握している状態が前提としてあり、そこから各相続人へ分配を行うという手続きであるため、遺産の使い込みがある状態では、かえって手続きが難航してしまう可能性があります。

どちらの手続きをとるべきか判断が難しいと思ったときは、その時点で一度弁護士に相談してみると良いでしょう。

6 まとめ

ここまで、使い込みがあったことが判明した場合、証拠を集めて、当事者間で話し合いをするという一連の流れをご説明いたしました。

しかし、いざ話し合いをしても、相手はそう簡単には認めてくれないことも多く、そのような相手に対して返還を求め続けるということは、容易ではありません。

また、明らかにするための証拠を集めるにしても、その時点で「使い込んだのは相手なのに、なぜこちらが大変な思いをして資料を請求しなければいけないのだろう」という怒りの感情を抱いてしまいますので、双方が感情的になり、話し合いがこじれてしまう事が多いのが現状です。

このような時、弁護士にご相談いただくことで、法的専門家の立場から早期解決を図ることが期待できます。また、相続人特定のための戸籍・証拠資料の収集から訴訟提起まで、ご依頼者様の代理で行いますので、精神的なご負担を大幅に軽減することが出来るでしょう。

アポロ法律事務所では、遺産の使い込みに関するご相談も承っております。ぜひ一度、ご相談にいらしてください。

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