やっとの思いで遺産の分け方がまとまったが、相続人の間で口約束しかしていなかったため、後々になって「言った、言わない」で揉めてしまった・・・というトラブルがないように、遺産分割協議をしたら、ぜひ、遺産分割協議書も作成しておきましょう。
ここでは、遺産分割協議書の作成方法、書き方についてご説明いたします。
このページの目次
1 遺産分割協議書作成のメリットとは?
相続手続きの際、遺言書が残されていない場合は、相続人の特定および財産調査終了後、相続人全員で遺産分割協議を行い、全員から合意を得られた後、金融機関での払い戻し(※1)や相続登記の手続きに入ることができます。
しかし、遺産分割協議の場では問題なく合意できたと思っていても、ある程度時間が経過すると、「そんな約束をした覚えはない」「いや、絶対に決めたはずだ」という、言った・言わないのトラブルが起きてしまうケースは少なからずあります。
そのようなトラブルを未然に防ぐためにも、口頭での約束で終わらせるのではなく、「遺産分割協議書」の作成もあわせてしておくことをおすすめします。
また、遺産分割協議書は、相続人同士でのトラブルを防ぐこと以外にも、遺言書の内容通りに相続がなされる場合や、法定相続分通りに相続が行われる場合等を除いて、以下の相続手続きを行う際、非常に有効なツールの一つとなります。
(1) 相続登記手続き、相続税の申告および納付
法務局で相続登記や相続税の申告をする場合、所有者が誰であるかを明らかにするために、遺産分割協議書を用いた申請手続きをすることが一般的です。
さらに、令和6年4月1日より、相続登記の申請が法律で義務化される(※2)ため、これまで以上に遺産分割協議書が必要な場面が増えることが予想されます。
(2) 預貯金の払い戻し及び解約、株式の名義変更
預貯金の払い戻し及び解約をする際や、株式の名義変更を行う場合においては、遺産分割協議書の提出は必須ではありませんが、用意をしておくと、その分手続きをスムーズに進めることができます。
例えば、被相続人が多数の金融機関に預金口座を保有していた場合、金融機関に提出する払戻手続依頼書を作成する際に、相続人全員の署名・押印が必要となったり、相続人全員からの委任状を求められたりする場合があります。
また、相続人が複数いる場合は、当然その分の作業が増えてしまうため、遠方に住んでいる相続人全員が依頼書に署名・捺印をし、返送されてくるまでにかなりの時間が経過してしまった、という問題も充分おこりうることでしょう。
しかし、遺産分割協議書があればその手続きを簡略化できるため、効率的に手続きを進めることが可能となるのです。
(※1) 令和元年7月1日より、遺産分割前の相続預金払い戻し制度が始まりました。詳しくは、一般社団法人全国銀行協会作成の下記PDFをご確認ください。
https://www.zenginkyo.or.jp/fileadmin/res/article/F/7705_heritage_leaf.pdf
(※2) 詳しくは、法務省民事局作成の下記「相続登記①/遺産分割協議編」PDFをご確認ください。
https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001392977.pdf
それでは次に、作成方法や書き方についてご説明していきます。
2 遺産分割協議書の作成方法について
遺産分割協議書には決められた書式というものはなく、手書きでもパソコンでも、縦書きでも横書きでも、作成方法に指定はありません。しかし、必ず明記しておかなければいけない項目がいくつか存在します。
「記載漏れがあり、遺産分割協議書としての効力が認められなかった・・・」ということがないように、以下の必須項目を押さえて作成していきましょう。
なお、遺産分割協議書は、相続人全員が各1通ずつ保管しておくものであるため、相続人の人数分を作成しなければいけないことも、覚えておくとよいでしょう。
一般的な記載必須項目例
- 被相続人の氏名、誕生日
- 被相続人の死亡日
- 被相続人の最後の住所、最後の本籍地
- 相続人のうち、誰がどの資産を相続するのか、その具体的な明記
- 換価分割、代償分割の場合、その具体的方法
- 後から判明した財産や債務があった場合のトラブル防止のため、そのことをカバーできる明確な文言の記載
- 相続人全員が合意をしたという明確な文言の記載
- 相続人全員の住所、氏名の署名及び捺印(実印)
- 合意した日付
3 遺産分割協議書のポイント
遺産分割には、下記の3つの方法があり、これらを組み合わせて、相続人の間で納得して遺産を分割することが多いと思います。
① 現物分割
最も一般的な方法で、土地や建物、株式や現金などの財産を、現物のまま相続人の間で分割します。
② 換価分割
不動産などの遺産を売却し、得られた売却金を相続人の間で分配する方法です。
③ 代償分割
誰か1人の相続人が財産を取得して他の相続人には代償金を支払うことによって清算する遺産分割の方法です。
それぞれの相続人の事情や金銭的評価額の方法、公平な分配方法などを考慮し、解約や相続登記、相続税申告などでも問題がないようにすることが大切です。分割方法についても、遺産の中身や相続人らの事情によってどれが適切なのか異なりますので、しっかり検討されて遺産分割協議書を作成していくことが必要になります。
4 まとめ
相続手続きは想像以上に手間と時間がかかり、精神的にも身体的にも、疲弊してしまう方が非常に多くいらっしゃいます。
そこしでも手続きの負担を減らすためにも、ぜひ、遺産分割協議とあわせて、遺産分割協議書を作成しておきましょう。
ただ、「作成したほうが良いことは分かっていても、相続人の人数分作成したり、書かなくてはいけない項目が複数あったりと、自分で作るのは大変そう・・・」と感じてしまう方も多いのではないでしょうか。
アポロ法律事務所では、相続事件を多数取り扱っており、遺産分割協議書の作成におけるご相談も承っております。遺産分割協議書の作成でお悩みの方は、ぜひ一度、ご相談にいらしてみませんか?