企業のための訴訟対応

はじめに

企業活動を行う中、いくら注意深くリスクを排除していたとしても、法的トラブルに巻き込まれてしまう場面があるかと思います。

例えば、信頼関係にあった取引相手との関係が悪化し、どれだけ請求しても売買代金を支払ってくれなくなってしまった、逆に、取引相手から理不尽な金額の請求をされてしまったり、管理監督者の従業員から、残業代を払うよう請求をされてしまったりするなど、企業に関係する法的紛争は多種多様あります。

これらのようなトラブルに巻き込まれた場合には、取引相手に訴訟を提起して代金を請求したり、一方で、取引相手、会社債権者、従業員等から提起された訴訟に対応したりする必要が生じてきます。

こうした訴訟を提起したり訴訟に対応したりするには、法的な知識はもちろん、裁判手続についての知識、経験も必要となりますし、時間や手間がかかります。そのため、裁判手続は、裁判実務経験が豊富な弁護士にいち早く相談することが何よりも大切です。

それでは、訴訟がどのように行われていくのか、簡単に流れを説明していきます。

1 訴訟前の準備段階

いきなり訴訟になることはまれです。その前に、紛争は顕在化しているはずです。例えば、相手方から弁護士名で内容証明郵便による通知書が届くことがあります。

この場合、法律や紛争解決の素人である当事者が書面で回答するなどしてしまいます。このように回答した書面は、訴訟でも証拠として提出されることはままあります。その回答書面が、実は、不利な事実も一緒に記載されたなどということも少なくなく、裁判所や相手へ誤解を与えかねない内容であるなども数多くあります。

弁護士は、豊富な法的知識や裁判を含む紛争解決経験があり、訴訟前から、訴訟になった時のリスクを考え、慎重に回答書面を作成します。

また、訴訟の場合、当方の主張が立証できないと勝てないので、証拠が非常に重要になります。訴訟になることも見越して、なるべく早目に重要証拠を確保するよう、訴訟前から動いていきます。証拠は、時間が経てば経つほど、収集が困難になりがちです。

また、時間や労力などを考えた場合、訴訟での解決を図るよりも交渉で解決した方が良いのが一般ですので、訴訟提起の準備を進めるのと同時並行で交渉により解決を目指すことが得策です。訴訟を回避しながらも訴訟の準備をし、より有利な条件で交渉ができるよう動いていくことが大切です。

2 訴訟提起

① 訴訟提起をする場合~原告になったとき~

(1) 訴状の作成と証拠の収集

ア 事件関係者からのヒアリング

どのような請求をするにしても、事実経過を把握することなく、請求権を根拠づけることは不可能です。

まずは、どのような事情があったのか、有利な事実、不利な事実、証拠として存在する書類やデータなどはどこまであるのか(この場合、相手方が持っているであろう証拠もおおよそ予想することが大切です)を素早く把握することが重要です。

事件関係者から事実経過をヒアリングして把握する必要がありますが、人間の記憶は曖昧でいい加減になりがちなので、メールや業務日報など当時の事実経過がわかる資料をできる限り多く集め、記憶とそれらの資料との整合性があるかどうかをしっかり確認する必要があります。

イ 証拠の収集

裁判では、お互い言い分が真っ向から食い違うことが少なくありません。同じ事実でも、当方と相手方で言い分が全く違うことも珍しくありません。

そのため、裁判所に当方の言い分が正しいと判断してもらえるよう、自分の言い分を根拠づける証拠が必要になります。裁判では、証拠の有無が大きく結果を分けることになります。

証拠は自分が持っている物以外でも、相手方当事者が持っている物や第三者が持っている物でも証拠になります。どのような証拠があるか、どういうものが証拠になるのか、しっかり調査を行い、できる限り有利な証拠をたくさん集めることが大切です。

(2) 訴訟提起

裁判所に訴状と証拠を提出して訴訟提起します。この際、証拠として、どこまでの証拠を出すか、相手の反論を予想しながら、出す証拠を選別します。また、裁判所に、当方の主張が理に適っているのかどうか、わかりやすく主張し、必要十分な証拠を提出することも大切です。

② 訴訟を起こされる場合~被告になったとき~

(1) 訴状の送達

裁判所から送られてくる訴状等が入った書類を受領することから始まります。

封筒には、訴状、証拠と呼び出し状(第1回口頭弁論期日)と答弁書の提出期限や書き方などを書いた書面が入っています。第1回口頭弁論期日に答弁書も提出せずに欠席もしてしまいますと、相手方の主張を全部認めたことになって敗訴判決を受けることになってしまいます。

そのため、答弁書は簡単でも良いので第1回口頭弁論期日に間に合うように提出する必要があります。内容に関する認否などは、第2回口頭弁論期日に行うようにすることもできます。

(2) 答弁書の作成、証拠の提出

訴状に記載されている請求の趣旨に対し、その請求を認めないという「棄却を求める」旨の答弁書を提出する必要があります。

さらに、なぜ請求を認めないのか、請求原因に対する認否、反論をする必要があります。一般的、第1回口頭弁論期日までに十分な準備が整うには時間的な余裕がないので、ひとまず、「棄却を求める」旨の答弁書だけを提出し、次回に反論をしっかり行うようにする形を取ることが多いです。

3 訴訟の前半

① 主張の整理

訴訟の前半は、双方の当事者の主張を整理し、お互いの主張を根拠づける証拠を提出する手続きが行われます。一般的に、主張整理をするために弁論準備手続きに付されることが多いです。

弁論準備期日は、法廷でなく別室の狭い部屋で行われ、裁判官とも30分~1時間にわたって争点について議論を行います。双方、弁護士が代理人になった場合、Web会議にて弁論準備手続きが行われることが多くなっています。

② 証拠の提出

証拠については、物証と人証があります。裁判所が重視するのは物証です。物証の中でも重要なのは書証です。書証は、手持ちの中から提出する場合が原則ですが、相手方や第三者から提出させることもできます。そのため、いかに証拠を収集するかが重要になってきます。

4 訴訟の後半

証人尋問

争点整理が済んで、物証の提出も終わると、次に人証の取り調べを行います。そして、双方が人証の取り調べを求める人の陳述書を作成することになります。

主張は、弁護士が評価的な要素を加えて準備書面という形で提出するのに対し、陳述書は、証人尋問をする予定の人が自身が経験・体験した事実を書面で伝えるものになります。これらを事前に提出したうえで、証人尋問が行われます。

通常、主尋問(申請者側代理人からの質問)→反対尋問(相手方代理人からの質問)→補充尋問(裁判官からの質問)の順序で行われます。証拠調べ期日の前には、尋問でどのような話をするのか、きちんと事前にリハーサルを行うこと、さらには、相手方弁護士からの反対尋問を想定して、相手方弁護士からの質問にはどう答えるかなどといった準備が必要になります。

5 訴訟の終了

① 判決か和解か

証拠調べ期日が終わる際、判決の日が指定されます。双方がこれまでの審理をまとめた最終準備書面を提出を行いたいと申し出ると(申し出ないとそのまま判決の日が指定されるようになることが多いです)、最終準備書面を提出するための期日が設けられ、その期日後に判決日が指定されるようになります。

この段階になると、裁判官の心証も概ね固まってきますので、最後に和解ができないかどうか双方に尋ねてくることも少なくありません。

② 判決に対する不服申し立て

判決が出て内容に不服がある場合、上級審裁判所に不服申し立てができます。地方裁判所で下された判決に不服がある場合、高等裁判所に控訴を提起することができます。

控訴審も不服がある場合、最高裁判所に不服申し立てもできますが、上告審は、憲法違反や判例違反といった、法的に問題があるか否かを判断する裁判所であり、事実認定の不服は見てもらえません。

よって、事実認定の争いが勝敗を分けるような事案の場合、事実上、控訴審裁判所が最後と言えます。

まとめ

訴訟では、事実そのものとその事実をどのように裁判所に見せるかが重要です。1つの事実でも、見せ方次第で、問題行動だったのか、誠実な行動だったのか評価が大きく異なることがあります。そのため、事件関係者のヒアリングと当時の資料を精査し、どのような見せ方がいいのかきちんと考えたうえで、訴訟に臨むことが重要です。

また、訴訟活動は最終的には裁判官を説得する活動ですし、和解で終わらせる場合、相手方との交渉も必要となりますので、交渉技術も必要になります。

訴訟対応にお困りなら、弁護士への早期の相談が何よりも大切になります。アポロ法律事務所では、数多くの訴訟を扱っており、訴訟実務に長けた弁護士がいます。どうぞ一度お気軽にご相談ください。

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