クレームとは、消費者が商品・サービスに関する不満があることから、それについて会社に責任ある対応を求めることを指します。
クレームには、商品やサービスに問題点があることを気づかせてくれ、改善につながるチャンスにもなる一方、対応を間違えれば、問題が大きくなり、SNSなどに書かれるなど風評被害に広がる可能性もあります。
クレームが来ると、逃げたくなるお気持ちになるかもしれませんが、適切な対応を行い、今後の改善につなげられるようにしていきましょう。
このページの目次
1 クレーム対応の基本
(1) 気持ちを落ち着かせること
クレーム対応は、クレームを言っているお客様の言い分にしっかり耳を傾け、謝罪を行い、お客様の怒りをしずめることが大切です。
このとき、不快感を抱かせてしまったことに謝り、不備に関して謝るべきではありません。 不備への謝罪は、事実確認をしたうえ行いましょう。
(2) 事実確認
クレームを言っているお客様のお気持ちが落ち着いてきてから、事実確認を行います。お客様の名前、住所、連絡先などを確認し、正確にお客様の言い分を聞くことが必要です。
お客様が不明確な言い方をされている場合は、どこが、どれくらい、いつからなど具体的な事実を尋ねるようにすることが大切です。
(3) 事実を踏まえた上での対応
お客様からの事実確認をふまえ、実際に商品やサービスに不備があるのかどうか調査を行います。その結果、不備が認められたのでしたら、不備を謝罪し、返品交換等の適切な対応を行っていきましょう。
仮に、事実が異なるようでしたら、その点をきちんと説明し、不備がないことを理解してもらうようにしましょう。
2 悪質なクレーム対応
もっとも、上記のような対応をしても、不満を言い続けるような場合、悪質なクレームとして、対応方法を変更した方がよいです。
悪質なクレームには、神経質で、次々と要求を変え、延々と電話やメールで要求が続くもの、些細なミスにつけこんで過大な要求をしてくること、対応困難な要求が執拗に繰り返されることなどがあります。
これらのクレームに自社で対応することが難しいときは、弁護士へ相談や対応を依頼することも検討することをお勧めします。
(1) 法律のルールを適用する
悪質なクレームの場合、クレーム客の独自の理論やルールに基づき意見を言い続け、要求を行ってきます。そのため、クレーム客の独自の理論やルールではなく、法律のルールに基づいて対応することを明確に伝え、法律のルールに沿った対応をするようにします。
通常のクレーム対応では、お客様の納得を目標達成にしますが、悪質なクレーム対応の場合、「言いなり」にならず、法律や裁判例等を根拠に、クレーム客の要求を断ったり、要求を断念させたりすることが解決の基本方針になります。
(2) 録音や写真など証拠化
電話で相談を受けた場合には録音する、メールやLINEなどのデータも消去せずに全て保存するなど、クレーム対応の全てを記録化します。
また、商品やサービスの内容についても、不備がどのようなものかきちんと客観的証拠があるようにすべきです。例えば「汚れている」といったクレームであれば、その現場で汚れていると指摘された商品の写真を撮るといった作業も重要でしょう。
記憶があいまいにならないうちに、クレームになった商品やサービスの関係者に聴取を行うことも大切です。
(3) 毅然とした態度で対応する
悪質なクレーム客は、些細な不備や落ち度について執拗なまでに非難をし続け、独自のルールに基づき要求を続けていきます。そのようなことをされても、あくまで「法律のルール」に沿った対応しかしないことをしっかりと示し、相手のペースに乗らず、毅然とした対応をすることが必要です。
3 クレーム対応を弁護士に依頼するメリット
クレーム対応は、自社だけで行った場合、クレーム客の独自ルールに引っ張られ過ぎてしまったり、逆に、実際に商品やサービスに不備があるのに不適切な対応をして問題を大きくしてしまったりするなどのリスクがあります。
では、弁護士に依頼した場合、どのようなメリットがあるのか、以下、説明いたします。
(1) 法律のルールに基づく対応をすることができる
弁護士は、法律の専門家であり、法律に基づいて問題を解決するのが仕事です。そのため、「法律のルールに基づく対応」を行うことについて、クレーム客からも納得をいただけます。
また、「お客様」と「不備のある商品やサービスを提供した会社」という関係性ではなく、あくまで、自社の代理人という立場であるという第三者的要素もあり、クレーム客と対等な関係になることができます。そのため、法律のルールに基づき、対等な関係で対応をしていくことが容易になります。
自社による対応の場合、クレーム客は、自分は「お客様」であると認識し、自社から「法律ではこうなっている」という話を受けても、「そういうことじゃないんだ。それよりも誠意を見せろ」などと、法律とは異なる観点から話をし続けてくることが少なくありません。
(2) きちんと解決する
弁護士は、まず、商品やサービスに不備があるのか客観的根拠や証拠に基づいて、判断します。
実際に不備があると判断した(可能性が高い場合も含む)場合、どの程度の損害なのか、クレームを言っているお客様の主張する損害内容なども精査し、損害賠償の支払いや商品の交換、返金を行うことを検討します。必要以上に紛争が激化しないよう配慮をした書面にし、円満解決を目指します。
お金を払ったり、商品を交換したりすることで解決ができる場合、合意書には、今後の請求は一切されないこと誹謗中傷を禁止する条項をつけ、これ以上クレームがされないような形の合意書を作成します。
また、商品やサービスに不備があったとして損害賠償請求などの裁判(民事調停、少額訴訟、訴訟等)を起こされることもあるかもしれません。その場合にも、弁護士は、法的観点からきちんと反論や主張を行い、裁判を終わらせることができます。
(3) 自社が業務に集中できる
悪質なクレーム客には、いくら労力と時間を割いたとしても、クレームを解決できず、クレーム対応自体にクレームが入るなどの悪循環になることも珍しくありません。労力や手間をかければかけるほど、本来の業務にダメージが及び、クレーム対応を行う従業員の精神は疲弊していきます。
これにより、本来の業務がおろそかになったり、クレーム対応に疲弊した従業員が退職や休職して人手不足になったりし、新たなミスや新たなクレームが発生することになるかもしれません。負のスパイラルに陥ることは、とても苦しいです。
クレーム対応が業務の負担になる、精神的に苦しいと思うようになったら、弁護士に依頼することをお勧めします。弁護士に依頼すると、弁護士は、クレーム客に対して、「今後は弁護士が対応するので、弁護士宛に連絡してください」と伝えます。
また、会社にクレーム客から電話がかかってきたとしても、弁護士に依頼しているので、弁護士に連絡してくださいと伝えることができ、自社対応をする必要がなくなります。
4 まとめ
クレーム対応は、時間も労力も使い、精神的にも疲弊することが少なくありません。ちょっとした対応の違いにより、問題が大きくなることもあります。初動から弁護士に相談することで、クレーム問題を大きくする前に解決できるケースもたくさんあります。
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