被相続人が亡くなると、ただちに相続が発生します。
その時、相続人として最初に行わなければいけない手続きとして、「相続人調査」がというものがあります。
相続人調査とは、簡単に言うと「法定相続人が誰であるか、戸籍をみて確認する行為」をいいます。
遺産分割協議を行う上では、そもそも誰が遺産をもらう権利を有しているかを確認しない限り、話し合いを進めていくことが出来ません。
「戸籍を取ってみて初めて、被相続人に認知をしている子がいたことが分かった」といったケースもありますので、戸籍を確認する作業というのは非常に大切なのです。
しかし、相続人が複数いる場合、戸籍の収集というのは想像以上に大変です。相続のケースによっては、何十通もの戸籍を取り寄せなくてはいけませんし、また、昔に作成された戸籍はすべて手書きの文字で書かれていますので、それを読みとることすら一苦労なのです。
「相続人がたくさんいて、自分で調査するのは難しいかもしれない」
「戸籍と言っても、どうやって集めればいいのかわからない」
そんな時は、一度弁護士にご相談されることをおすすめします。
弁護士は戸籍の収集を行うだけでなく、遺産として何が残されているのかを調べる財産調査まで行うことが出来ます。
相続手続きを円滑に進めたいとお悩みの方は、ぜひ一度、専門家である弁護士にご相談してみることをおすすめいたします。
とはいえ、相続のケースによって相続人調査の難易度というのは大きく異なりますので、まずは、相続人調査の方法や、戸籍の取得方法についてご説明していきます。
このページの目次
1 相続人調査の方法
ここでは、実際にどのように相続人を調査していくのかについて、ご説明していきます。
① 相続人の範囲及び相続順位を把握する
調査の大前提として、誰が相続人となるのかを確認しなければいけません。
相続人のなかで亡くなっている方がいる場合や、また、その方に子どもがいる場合など、ケースは様々ですので、どこまで取得すればよいのかを初めに確認しておきましょう。
なお、相続人の範囲の確認方法については、「第2項 必要な戸籍の範囲」にてご説明いたします。
② 被相続人の出生~死亡までの、連続した戸籍謄本を取得する
まず初めに、被相続人が死亡したことが記載された戸籍を取得し、そこから出生の戸籍までを遡って取得していきしょう。
被相続人の出生戸籍を持っている場合は、出生から死亡までの順番で取得してももちろん構いませんが、特別な事情がない限りは通常持っていることはあまりないので、死亡の戸籍から出生までを辿るケースがほとんどです。
③ 相続人全員の現在戸籍謄本を取得する
被相続人のすべての戸籍を取り終えたら、次に、取り終えた戸籍を確認し、①で把握しておいた相続人の戸籍謄本をすべて取得していきます。
相続人の戸籍を取得する場合、謄本であれば1通に複数の相続人が記載されるため、費用や手間を考えて、抄本ではなく謄本を取得しておくと良いでしょう。
④ 被相続人の出生~死亡までの戸籍謄本、相続人全員の現在戸籍を取得して終了
③までの戸籍をすべて取り終えたら、相続人の調査は終了ですが、ここでおすすめなのが「法定相続情報一覧図」の申請・取得です。
通常、相続手続きをする各機関においては、相続関係の確認書類として②と③の戸籍謄本一式の提出が求められます。
例えば、払い戻しの手続きをする際など、銀行側のほうで戸籍をみて相続人の確認をします。
相続人が少ない場合であれば良いのですが、相続人が複数いる場合は、この確認作業に時間がかかってしまいます。
このような時のために、「法定相続情報一覧図」を事前に作成しておくことで、銀行側の確認の時間を大幅に省くことができ、結果的に、相続手続きをより円滑に進めることが出来るのです。
法定相続情報一覧図の取得方法について、詳しくはこちらの法務局HPをご参照ください。(https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000014.html)
2 必要な戸籍の範囲
戸籍を取得する流れについて確認が出来たら、次に、相続のケース別に必要な戸籍についても把握しておきましょう。
まず、どのケースにおいても必ず必要となる戸籍は次の2つです。
必ず必要な戸籍
- 被相続人の出生~死亡までの連続した戸籍謄本
- 相続人全員の現在戸籍謄本
次に、相続のケース別にご説明していきます。
相続のケース別に必要な戸籍
A 被相続人に配偶者がいる場合
- 配偶者の現在戸籍謄本
B 被相続人に子どもがいる場合
- 子どもの現在戸籍謄本
C 被相続人に子どもがいた(被相続人より先に死亡していた)場合
- (先に死亡した被相続人の)子どもの出生~死亡までの連続した戸籍謄本
- (先に死亡した被相続人の)子どもに代襲者(相続人の子や孫)がいた場合、その代襲者の現在戸籍謄本
D 被相続人に子どもがいない場合
両親または祖父母が相続人となりますが、被相続人より全員先に死亡している場合、第三順位となる被相続人の兄弟姉妹が相続人となります。
- (被相続人の)父母の出生~死亡までの連続した戸籍謄本または除籍謄本
- (被相続人の)祖父母の死亡の記載がある戸籍謄本または除籍謄本
- (被相続人の)兄弟姉妹の現在戸籍謄本
- 被相続人より先に死亡している兄弟姉妹がいる場合、その者の出生~死亡までの連続した戸籍謄本
このように、相続人のケースによって取得の範囲はさまざまですので、戸籍の収集の前に相続人の範囲を特定しておくことが非常に重要となります。
3 戸籍の取得方法
戸籍の取得には、①窓口で取得する方法 ②郵送で取得する方法の、2種類があります。
それぞれの申請の際に必要な書類を以下にまとめましたので、ご確認ください。
なお、上記2つの方法に加えて、令和6年3月1日より「広域交付制度」が開始されますので、その制度についてもご説明いたします。
いずれの方法にしても、申請者の立場によって必要な書類が異なるため、事前に役所へ問い合わせておくと良いでしょう。
窓口申請で必要な書類
- 本人確認資料(運転免許証、パスポート等)
- 戸籍交付申請書(窓口で交付)
- 申請者の戸籍謄本(相続関係の確認のため)
- 委任状(代理人の場合)
- 手数料
郵送申請で必要な書類
- 本人確認資料の写し(運転免許証、パスポート等)
- 定額小為替(改正原戸籍及び除籍謄本750円、戸籍謄本450円)
- 自分の住所を記載し、切手を貼付した返信用封筒
- 戸籍証明書等申請依頼書(各役所のHPからダウンロード可能)
- 委任状(代理人の場合)
広域交付制度
戸籍謄本は、従来、本籍地のある市町村役場の窓口へ行くか、遠方の場合は郵送にて発行してもらう方法しかありませんでした。
しかし、令和6年3月1日より開始される広域交付制度によって、最寄りの市区町村役場窓口にて、本籍地以外の戸籍謄本も取得できるようになりました。
なお、この制度を利用出来る方は、①本人 ②配偶者 ③父母・祖父母の直系尊属 ④子・孫等の直系卑属にあたる方に限られます。また、コンピュータ化されていない一部の戸籍・除籍、また一部事項証明書、個人事項証明書については発行が出来ませんので、ご注意ください。
広域交付制度の手続きについて、詳しくはこちらの法務省HPをご参照ください。(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji04_00082.html)
4 まとめ
相続人の調査についてご説明いたしましたが、「想像以上に大変なんだな」と感じた方も多いのではないでしょうか。
一言で相続人調査と言っても、相続人の範囲の特定から始まり、役所に問い合わせて戸籍を一つ一つ収集をする・・・というのは、慣れていない方ですと時間も手間もかかってしまい、非常に骨が折れる作業となってしまいます。
- 相続人の数が多い
- 戸籍の読み方に自信がない
- 多忙のため、戸籍の収集をする時間がない
このような場合は、一度、弁護士にご相談されることをおすすめいたします。
戸籍の読み方というのは、古いものを辿っていくほど難しいため、時には相続人を見落としてしまう可能性があります。
弁護士にお任せいただければ、相続人漏れの心配もなく、安心して相続人調査を進めることができるのです。
アポロ法律事務所では、戸籍の収集から法定相続情報一覧図の作成まで、一括した相続人調査のご依頼を承っております。ぜひ一度、ご相談にいらしてみませんか。