売掛金を回収したい

1 売掛金の支払いが遅れている理由

あれ?売掛金の支払が遅れている・・・

売掛金の支払いが遅れた場合、まずは買主に連絡して、「なぜ支払いが遅れているのか」、「いつまでに支払えるのか」を早急に確認することが必要です。

(1) 単純に支払いを忘れている

支払いが遅れていることについて電話で確認したところ、単に忘れていたということもあるかもしれません。本当に忘れていただけならば、電話などで催促をすればすぐに回収できることが多いでしょう。

しかし、「忘れていた」「すぐ払うが、少し待ってくれ」などと言いながら、一向に支払われないこともある場合があるかもしれません。そうした場合、下記(2)を疑うべきかもしれません。

(2) 資金繰りが苦しい

資金繰りが苦しくて支払いができないことがあります。商品を販売する会社は、売上代金を回収する時期と仕入れの返済時期との間にタイムラグがあり、キャッシュに余裕がないと資金ショートを起こすことがあります。

たまたま、予定していた入金がないなどの突発的な資金繰りの悪化ならば問題ないとはいえ、キャッシュに余裕がないなどの場合、自転車操業であり、何かトラブルがあればすぐに支払いが厳しくなる会社であることを認識し、リスク管理をする必要があります。

特に、頻繁に支払いが滞る場合には注意が必要です。それだけ資金繰りが困難で倒産する可能性が高いということです。取引先が倒産すると、ほとんど回収は見込めなくなります。

そのため、何度も支払いが滞る場合、前の支払いがあるまでは新たな取引を行わないなどの防御策を考えましょう。

(3) 商品の瑕疵や不備があるなどの理由により敢えて支払いをしてこない

買主は、商品やサービス内容に瑕疵や不備があるので、修理や新しい商品の交換を求めるなど、不完全履行に対して支払いを留保していることも考えられます。その場合、実際に、どのような契約内容であるのか、商品に瑕疵や不備が実際にあるのかなどをしっかり確認することが必要です。

商品やサービスに瑕疵や不備が実際にあった場合、その点について会社としてどのように対応すべきか検討しなければなりません。

また、商品に難癖をつけて代金を支払わない、減額を要求するなどの不誠実な業者も存在します。実際に、買主の主張は、法律的にそういえるのかどうかなど慎重に見極める必要があります。もし、商品に瑕疵や不備がないのなら、難癖に応じようとせず、毅然と代金の支払いを請求する必要があります。

2 売掛金を回収するための行動

売掛金の支払いがされない場合、内容証明や法的手続きを取る前に、できるようならやるべきことがあります。内容証明や法的手続きを取った場合、買主と対立関係が強くなり、買主も、一切の協力的対応をしてくれないかもしれません。

協力的対応が期待できそうなら、下記の方法ができるように交渉してみるとよいでしょう。下記の方法を行うにあたって、法的な問題をクリアし、不備のない形にするために、弁護士に相談することをお勧めします。

① 商品の引き揚げ

少しでも未払売掛金の額を減らすことが大切です。商品がまだ買主の手元に残っているようでしたら、商品の引き揚げができるように、買主と交渉してみましょう。

買主が引き揚げに承諾しない場合、無断で商品を引き揚げるのは犯罪になってしまいますので、買主に了承を得てから引き揚げをしましょう。あとで、承諾していないなどと揉めないために、承諾を得たことを書面化しておくことが必要です。

仮に、承諾が得られないときは、動産引渡断行仮処という裁判所の手続をすれば、強制的に商品を引き揚げることができます。

② 譲渡担保をつける

商品の引き揚げについて難色を示された場合、財産的価値が高く、転売が容易で、使用され続けても財産的価値が著しく低くなるなどしない物について、譲渡担保をつけたり、買主の取引先からの売掛金や報酬債権などの債権に譲渡担保を付けたりすることをお勧めします。

売掛金の支払いが遅れているということは、倒産の可能性が高いということです。倒産した場合、たくさんの債権者が多額の債権を持っており、その債権者たちにわずかな会社財産を少しずつ配当されるか、配当なしなどとされることが少なくありません。

倒産や資金ショートなどで支払い能力が低くなるなどの場合にも、少しでも未払の売掛金が回収できるように、優先的に買主の財産を確保できる譲渡担保をつけることは得策となります。

③ 連帯保証人をつける

会社である買主に資産がない場合、会社役員や関係者に連帯保証人になってもらうことも有効な方法になります。注意すべき点として、会社社長は、会社の多くの借金の連帯保証人になっていることが多く、会社が倒産するときには会社社長も一緒に自己破産することなどが少ないことがあります。

個人資産があるが、実は負債も多く、不動産には抵当権がたくさんついていたなどと言うことも少なくありません。そこで、そのほかの役員など、ほかの会社の借金の連帯保証人にはなっていない人についても、連帯保証人になってもらうことも可能であればそのようにすることが有効な方法です。

3 売掛金の支払い

上記のような方法により、売掛金が回収できればいいですが、それでも支払ってくれないこともあるかもしれません。その場合、裁判による回収を見据えて行動することが必要になっていきます。

(1) 弁護士による内容証明郵便

まず、内容証明郵便を買主に送り、支払を督促してみましょう。内容証明郵便は自社で送ることも可能ですが、弁護士に依頼して弁護士の名前で送ることをお勧めします。

弁護士が関わっており、支払がなければ法的手段をとることを警告する内容にすることにより、買主の非協力的な態度に対して心理的圧力をかけ、支払を促すことが可能になります。

(2) 仮差押え

法的手段にて、売掛金を回収する場合、まずは、仮差押えを行うことが有効です。

仮差押えとは、金銭債権またはこれに換えることのできる債権を保全するために、債権額に相当する範囲で債務者の財産の処分を禁じ、現状を変更できないようにする手続きをいいます。

さきほどご説明したように、売掛金を支払わないのは、資金繰りが困難なケースが多いです。時間が経てば経つほど、資金が枯渇する、あるいはほかの債権者が債権回収のために買主の財産が使われることが増えていきます。

裁判に勝っても、買主に財産もない場合、結局一円も回収できないということになりかねません。そこで、裁判を始める前に、買主の財産をあらかじめ確保しておくことが必要になるのです。

仮差押えをした後、売掛金について訴訟をして判決をもらい、強制執行により仮差押えをしていた財産を取り上げて、判決によって命じられた金額の支払いに充てることができます。場合によっては、仮差押えをした段階で、買主から、仮差押えをされたままだと困ると考え、支払いをしてくるなどということもあります。

仮差押えの対象となる財産は、さまざまなものがあります。買主の業種や事業内容、事情によって、どのような財産を仮差押えるのが有効なのかきちんと検討する必要があります。

例えば、買主の銀行預金、不動産、取引上の債権、法人として加入している生命保険や自動車、建設重機、機械類などがあります。

(3) 裁判

裁判所を使って解決を図る方法には、支払い督促、少額訴訟、通常訴訟という種類があります。

① 支払督促

「支払督促」とは、裁判所から文書で支払いの督促をしてもらう制度です。支払督促の手続により、仮執行宣言付支払督促を獲得できます。仮執行宣言付支払督促は、いわゆる債務名義の1つであり、相手の財産の差押などの強制執行をすることができるようになります。

支払督促を受けた側は、支払いに異議がある場合は、「異議」を申し出る手続きをすることができ、その場合は、支払督促が通常の裁判に移行することになっています。「異議」の申し出がなければ、そのまま仮執行宣言付支払督促を獲得できます。

② 少額訴訟

「少額訴訟」とは、60万円以下の請求について1回で裁判を終結させる手続きです。少額訴訟についても、訴えられた側は「少額訴訟ではなく通常訴訟で審理すること」を裁判所にもとめることができ、その場合は、少額訴訟の手続きは通常訴訟に移行します。

③ 通常訴訟

通常訴訟は、もっとも一般的な裁判手続きです。被告が原告の言い分を認めれば原告勝利の判決、またが被告の認諾調書作成で訴訟は終わりますが、事案に争いがあれば、期日を重ねて原告と被告双方の言い分を準備書面により出し合い、裁判所が争点を整理して絞ります。1日で判決が出る少額訴訟とは異なり、争点ややりとりが多くなれば多いほど判決までの時間を要します。

(4) 強制執行を行う

上記(3)により、裁判で買主に対して未払売掛金を払うよう命じられるようになっても(これを専門用語では、債務名義を取るといいます)、買主が未払売掛金を支払わないことがあります。

その場合に、行うことができるのは、強制執行です。強制執行手続は、賃借人が所有している財産があれば、その財産を強制的に取り上げてこれを未払の未払売掛金に充てることができるのです。

さきほど、仮差押えをご説明しましたが、仮差押えをしていた財産を強制執行することもできますし、仮差押えしていない財産を強制執行することもできます。

4 まとめ

いかがでしょうか。売掛金の回収で大事なことは、早期に適切な対応するということです。取引先ですと、関係性の悪化を危惧して、あまり強く言えないなどと言うこともあるかもしれません。しかし、そうこう言っている間に、取引先が倒産して売掛金の回収ができなくなったなどとなりかねません。

アポロ法律事務所は、未払売掛金回収についても、さまざまな手法を使い回収に成功しており、多くの実績を有しております。お気軽にご相談ください。

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